都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

すれ違いのネズミ

ジャララバードの宿舎。
台所。
カタカタと蠢く影の主はネズミ。
人のいる所にネズミあり。
宿舎をうろつく猫はなにをしていたのか?
ネズミは台所といわず、食事が載ったテーブルにまで侵攻した。
事務所では、机の引き出しに入れたクッキーが食われ、フンまでされた。
食い物の恨みは、とうぜん怖い。
見つけ次第追い払われ、果ては殺鼠剤という化学兵器まで持ち出される。
それでも彼らは徘徊した。
 
ある日、宿舎の洗濯機の傍らに置かれたバケツからカタカタと不審な物音がした。
覗きこむと、ネズミがバケツの中に落ち込んで、脱出不能状態になっていた。
そのサイズ、親指ほど。
這い上がることができず、バケツの底をただひたすら周回するネズミ。
「うっ、可愛い~」
不覚にも、そっちの方向に反応してしまった。
通りがかる守衛兼寮長のような存在のアフガン人職員。
覗きこんだ彼も面白そうに笑顔を見せる。
彼はバケツを手にする。
バケツにホースの先端を投げ込む。
蛇口をひねる。
満水のバケツ。
「クマさんが捕獲したのか?」
凍結した僕。