都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

遥かなるエアコン

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言わずもがなだが、アフガニスタンの夏は暑い。
冬は避寒地として知られるジャララバードの夏は、残酷なまでに暑い。
日本と違い湿気がないのは過ごしやすくもあるが、空気中に遮るものがないので、気分は直火焼き。
そんなアフガニスタンで冷房といえば、団扇であり、扇風機であり、ウォータークーラーだった。
日本のエアコンのような機械とは、残念ながら縁がなかった。
そもそも、電気があるだけでも贅沢なのである。
日本のようなエアコンを、トルハム国境にあったお役人様の事務所で見た時は、室内の冷気に鳥肌が立った。
入った瞬間、殺意を憶えたのはきっと気のせいじゃない。
 
ウォータークーラー。
学校や公民館とかにありそうな、冷水器のことではない。
手元の辞書には、冷水器とあるが、アフガンの辞書にはもう一つ意味がある。
上の写真がそれである。
これぞ、アフガニスタン版の冷房装置だ。
家屋の外壁に据え付けられた木枠と金網で作られた四角い箱状の物体。
金網は二重になっており、二枚の金網の隙間に、カヤのような植物を敷きつめる。
箱の中は扇風機のようなファンが入っている。
この箱は写真のように、金属製のばんじゅうの上に設置する。
そして、写真にホースが写り、なにやら四角い金属の枠と繋がっているのが見えるだろうか。
この金属枠は木枠の箱の上面にセッティングされる。
枠の断面が凹の字型になり、なぜか溝になっているところに注目。
ばんじゅうに水が注がれると、ばんじゅうの中に入れたポンプにより、
ホースから木枠の上面にある金属枠に水が届く。
金属枠の溝の底面にはいくつもの穴があり、水はその穴から漏れ出し、
箱側面の金網に敷きつめられたカヤをゆっくり伝って、ばんじゅうに戻る。
ゆっくり落ちる水によって冷やされた空気は、箱の中のファンによって室内に送風される。
日本のエアコンとは、比較にならないくらい低性能だが、それでも多少は冷える。
見た目はレトロなもので、ちょっとエコっぽく見えるかもしれないが、
実はファンとポンプの稼働音が大きいので、喧しくてたまらない機械でもあった。
でも、それだって、電気があればの話で、贅沢な悩みであるのだ。
 
(写真は08年6月宿舎にて撮影。ウォータークーラーを修理中)