都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

第四話 大いなるギャップ

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よく誤解されますが、現地で雇用したのは作業員だけじゃありません。
100人近い職員がいました。
人員の配置は現場と事務所でおおよそ半分半分というところ。
エンジニアサーブと呼ばれる現場監督、事務、会計から、
その他に運転手、メカニック、メイソン、チョキダールなどなど。
彼らは日本で言うところの正社員。
月給で給料を貰い、忌引きとか有給休暇の規定もあるし、残業代など基本給以外でのお手当もある。
給料の前借りだって、規定の範囲内で可能だし、
辞める時は雇用証明の書類に、給料の中から積み立ている退職金も受け取れます。
書きだしてみると、日本人より待遇が良いような・・・・・・(以下自粛)
いえいえ、いろんな社員待遇が決まっているとはいえ、金額の方は現地水準でしたので、
日本国内の正社員の微々たる初任給であっても、現地ではとんでもない大金です。
彼らはそんなお給料で家族を養います。
彼らは完全にNGOを就職先の一つとして認識しています。
ボランティアであった我々とは、そのあたりの認識が違います。
あっ、もちろん日本人の採用方式はNGOによっていろいろでしょうから、あくまで自分の元所属先の例です。
ですので、日本でなにかボランティアをする感覚だと、そこに大きなギャップが生じます。
ようは国内で語られたり、書かれたりする良心とか善意とかだけじゃ足りないワケです。
「組織の存続と経営の効率化ために、血も涙もなく人をクビにできるような人」
伊勢崎賢治著の『国際貢献のウソ』という本の中に、NGOに向いている人としてこんな一文があります。
クビの話は脇に置いて、昨日に触れた事務長氏はその点では確かに向いていました。
(もちろん血も涙もある人ですよ)
日本人は組織の運営・管理サイドに立った仕事がメインなワケです。(あくまで元所属先の例です)
現場に立てば、仕事の段取りを考えて作業を監督し、作業員の出欠も確認しなければなりません。
仕事で使う機材や資材、自分の組の作業員の給料も管理しないとだめです。
事務所にいれば、現場が注文が来る資材、機材、大物から小物まで一切の調達を割り振りし、
そしてたいてい、買う前に値段を調べにバザールへ出かけます。
他に重要なのは車の差配があります。
多い時は15台くらいはあり、そのうち一台は必ず修理中です。
2~3台修理中でも不思議ではありません。(こんなのウチだけだったかも)
稼働状態の車であっても、どこぞ悪いところを抱えたまま走らせてます。
さて、ここで問題なのは、それらに必要なお金です。
日本人の僕でさえ、あり得ない大金が毎週、毎週、毎日、毎日、動くわけです。
それに手をつけたくなる現地人職員が出てくるのもやむえない話。
その時は、たぶんきっとこのお金は日本からの良心とかいう話は飛んじゃうんでしょうね。
あの手この手、業者も交えていろいろと画策。
ホントに痛い目に遭います。
「初めは物珍しさも手伝って、「日本にはない良さ」を称賛するが、ある時期を過ぎると嫌気がさしてくる ことが多い。それも、過ぎると、実は美点も欠点も表裏一体で、その人や土地柄をそのものとして受
 け容れることができるようになる」
この三行でいう「ある時期」とは、僕個人はこういう話がいろいろ見えたり、聞き始めたりする時期でした。
日本で感じるNGOに対するイメージとは違い、最強のギャップがこのように現地には埋め込んであるワケです。
こんな話で解雇した人、配置転換された人。何人かいました。
解雇されて事務所を去っていく人の姿を見ながら、こんなの日本で言えんよな~と思うのです。
そんなこんなで最初の三か月も過ぎる頃には、完璧に人間不信だったような気がします。
周囲にはワケ分らん言葉が飛び交うおかげで、何かにつけて陰口を叩かれてるのではと考え出します。
この人間不信の渦を通り超えると、「受け容れる」というよりか、
僕の場合は「もうしゃあないか」という感じになりました。
ホント最初の半年と、あと最後の2カ月あたりは、他にも理由はありますが、相当危なかったですね。
という具合ですので、日本に帰ってからいくつかのNGO絡みな人の話を読んだり、聞いたりすると、
「よそさんはこういうことないのかな~?」とその方面に関して何も語ってない時は不思議に思うのです。
時に「オマエなにやってんだ」という具合で叱り飛ばすことはあっても、事が済めば仲直り。
個別に好き嫌いはありますが、引きずらないのが、かの地の人々の良いところです。
日本人みたいに引きずっちゃうと、彼の地の場合は冗談じゃなく怖いですから。
くどいんですけど、まだ次回に続きます。
 
(写真は事務所の会計室です。08年9月に撮影)