都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

携帯電話を巡って

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現地に旅立つ前、三年前のこの時期、親によくこう言われました。

アフガニスタンなんか、ロクに電話もないやろ。どうやって日本と連絡するんや?」

問われた僕は、あまり深く考えていませんでした。
というより、そのあたりは全く期待していませんでした。
携帯電話が溢れるこの国とは、全く違うだろうと思っていました。

ところが、現地に行ってみると、けっこう携帯電話をみんな持ってます。
普及が進んでいるという感じで、都市部はもちろん農村部でも意外と通話圏内。
初めて携帯を買ったという人が徐々に増えていました。
メーカーはノキアソニーサムスンとか。電話会社もローシャン、AWCCなど3~4社。
事務所で購入したモノは、だいたい2000~2400ルピー前後くらいでした。
中古品も出回っているので、もっと安く手に入るのかもしれませんが、
彼らの収入を考えれば、なかなかの冒険です。
ちなみに、プリペイドカード式で通話料金を支払います。
口座引き落としをしようにも、銀行口座を持っている人は稀ですので。
一方、固定電話は一度も見ることはありませんでした。
電話回線を国中に張り巡らせるより、中継基地を作る方が効率がいいのかもしれません。
携帯電話の普及によって、いつ届くかわからない郵便は衰退しているとも聞きました。

しかし、普及していると言ってもアナログな世界で生きているみなさんです。
エンジニア・サーブと呼ばれている高学歴な方々は、
携帯電話を使いこなしているように見えました。
ところが、そうじゃないスタッフは買ったはいいけど、使い方がわからないという事態に陥り、
仕事の合間に何度もエンジニア・サーブに尋ねて回ることになります。
そして、実際のところ多くの人が、番号を入力せず、ペンでメモ帳に書いて済ませます。
あのゴツゴツした太い指で入力するのは、やはり困難なのでしょうか?
あるドライバーは、購入した携帯電話のどこをどう操作したのか、
そもそも、なんでそんなモノがデータに記録されていたのか、
ギャルゲー風の美少女キャラが、堂々と待ち受け画面を飾ってしまい大変難儀していました。
しかも、何人ものエンジニア・サーブに聞いて回っても変更の仕方が分らず、
彼はその日、顔を赤くして、ずっと携帯電話で悩んでました。

さらに別の日、バザールへ所用で出かけると、携帯電話を手にみんな深刻な話になっています。
顔がみんな緊張し、こわばっています。なんの騒ぎかと思いきや、
「死の番号だ。この電話番号から電話が来ても、出ちゃダメだぞ。出たら死ぬぞ」
「モスクでほんとに死んだ奴が出たんだ。危ないぞ」
いい年したヒゲ面のおじさんたちが集まって、何を話しているんですか。
その日の終業時間までに、噂は事務所中に広がりました。
みんな噂を真面目に検討していました。
問題の電話番号を、みんなでメモって帰宅していきました。
デマの元ネタは『着信アリ』でよろしいですか?
(写真は現地で買ったノキア社製の携帯電話)