都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

黄色い箱と一緒に①再びのレベル

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早いモノで考古学徒を始めた頃から、今年で10年になってしまう。
もう考古学徒のラインから大きく外れてしまったが、
ほとんどの考古学徒と同様に、大学の夏・冬・春の休みはほとんど発掘現場にいた。
初めて現場に行った時、用語もわからず困ったものである。
家が農家ではないので、鋤簾とか手箕も初めてだった。
パワーショベルと呼んでたモノが、ユンボだったり、バックホーと呼ばれたりする。
ちなみにジャララバード北方の現場では、EXもしくはエクスカベーターと呼ばれていた。
これは単に、使用車種が日立のEX100と200だったことに由来すると思われる。

発掘現場という世界は、単に掘るだけではない。
図面を書いて記録を作る。
「発掘調査とは遺跡を破壊する行為である。ゆえに、記録はとても大切である」
考古学徒はみなそうやって現場で躾けられたはずである。
土層の土色と質の違いに悩みくねりながら、土層断面のラインを付けていき、ダメだしを食らいやり直す。
測量もやる。
トランシットや平板測量の平板を立てるのに、バカみたいに手間取ったりもする。
そうした測量器具のひとつにレベルがある。
http://www.taise.co.jp/page6.htm
上記のサイトのようなことをする。
土層断面図の作成に必須作業であり、考古学徒ならこのレベルを水平に立てるのに、
慣れない頃は永遠ともいえる時間を消費した経験を持つ人も多かろう。
「なぜ気泡が中心に来ないのだ?」
「オマエの立て方が悪いからだ」
ようやく水平に立てたら、三脚の足を蹴られてやり直しなんて、
ヒドイ先輩を持ってる人もいるかもしれない。
回数を重ねて慣れて来ると、これを2、3分の内に立てることが可能になる。
日本語で正しくは水準儀と呼ばれ、通称はレベル。
ジャララバード北方の現場では、レベルマシンだった。
セットで使う標尺はなんて言ってたかいな?
発掘現場では標尺のことは、スタッフ・箱尺・バカボー君とか言われていた。
そんなレベルは絶対に、専用の箱に入れて持ち歩く。箱は黄色いことが多い。
箱に入れていようが、精密機器なので慎重な扱いが必要だ。

背中には青を基調とした大きなバックパック、手にはパソコンの入った黒のバック、
肩に下げるはレベルの入った黄色い専用箱。服装はスニーカーに、もちろんシャルワルカミーズ。
それも、バザールで作ってもらった上等なシャルワルカミーズ。
そんな格好でカブール空港へやって来たのは、二度目の一時帰国の時だった。
ジャララバードの事務所を出発すること、車で数時間が過ぎていた。
黄色い箱を巡る戦いはこの空港から始まった。
(写真はアフガンの現場で使われていたEX。08年1月に撮影。肝心のレベルの画像がなかった)