都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

黄色い箱と一緒に③水際の攻防戦

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上の写真は、イスラマバード行きの飛行機の搭乗が、今まさに開始されようとしているところである。
階段の上で数人の関係者が集まっているのが見えると思う。
何をしているのか?
手荷物検査の準備だったのだ。
このギリギリの水際でさえも、手荷物検査。
明らかにアフガン側の検査を信用していないと見える。
まあ確かに、クマはアフガン人からはなんのチェックも受けなかったワケだが・・・
肩に下げた黄色い箱が不安にならない筈がない。
これが日本であれば、チケットカウンターから連絡が行っているようなチームワークも期待できる。
「ここはどこですか?」
「カブール空港です」
ほんの少しでも期待したクマがバカだった。
「なんだこの箱は?」
「箱を開けろ」
「なんだこりゃ?なんに使う道具なんだ」
勘弁してくれ。同じ展開なのか。
「レベルマシーンと言いまして、測量で使うんです」
武器じゃないんだから、通してよ。
マゴマゴしていると、また現れたのは、さっきの洋装のアフガン人だった。
流暢な英語を使う彼は、再び助けの手を差し伸べてくれた。
ああホントにありがとうございます。
しかも、偶然にも座席は隣だった。
「どこから来たんですか?」
「ジャララバードからです。日本のNGOの者でして・・・」
「ジャララバードだって。オレはソルフロッド生まれなんだ」
「は?隣の郡のソルフロッド。おお、うちでもソルフロッド出身のスタッフは多いっす」
「で、なんていうNGOなんだ?JICAか?」
「いえ、○○○なんですけど」(JICAはNGOじゃないけど、NGOとして認識されている事が多い)
「知らない」
ソルフロッドじゃ、そこそこ通った名前だと思ってたけど、あっさり全否定。
「今はロンドンに住んでるんだ。今回、故郷に帰っていたんだ」
なるほど、ロンドン在住。スーツ姿も決まっているワケだ。
当然、うちらの名前などロンドンに響いてる筈がない。
離陸してからは、彼はとても名残惜しそうに窓の外の祖国をずっと眺めていた。
そんな中、僕はすでにイスラマバード空港での戦いを予想していた。
なぜなら、レベルを問題視したのはみなパキスタン人だからだ。
これから彼らの総本山にトランジットのために、数時間だけ滞在するのだ。
どう答えればいいだろう。
着陸時にまでに、答えを用意しておかねばならない。
でも、結局のところはいつも通り。
「物事なるようにしかならん。出たとこ勝負だ~」
たいてい、これで失敗しているのだが・・・
(08年6月に撮影。手前の男の人は文中のアフガン人ではありません)