都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

黄色い箱と一緒に④カオスの中での休息

イスラマバード空港の入口にある売店で売ってたペプシはえらく高かった。
ジャララバードなら、大きいペットボトルが買えそうな値段で缶のペプシを購入した。
ボラレタのか、大都会イスラマバードの物価が高いせいのなのかよく知らない。
ともかく入国審査は、えらく簡単だった。まずそのことに乾杯しよう。
トランジットであり、バンコク経由関空行きのタイ航空のチケットを見せると、
なんのトラブルもなく通してくれた。
レベルのせいでギンギンに緊張して僕は何だったのだ?
到着した頃は日もすっかり暮れていた。
4時間くらいでタイ航空に乗り込むのだから、少し街を観光してもよかったかもしれないが、
荷物が重いし、もうすでに疲れたので空港に居座ることにした。
だが、搭乗手続き開始はまだまだ先だった。
いったん空港の出口へ向かう。
例によって、呼んでもないのにワンサカとタクシードライバーが集まって来た。
「良いホテルを知ってるんだ。案内するよ」
「俺の方がいいホテル知ってる。俺についてこい」
「いいや、俺にしろ」
「やかましいわ。オレはトランジットなんだ。今夜には出発するんだよ」
そういうと、みな諦めて他の獲物に移った。約一名を除いては。
「あんた何人だ?」
「日本人だ」
「おお、日本人なのにパシュトゥーを話すのか」
「ジャララバードにいるから、少しくらいは・・・」
「おお、そうか。なら、また来るんだろう」
「ああ休暇だから。3週間ほどで・・・」
「その時は、オレを呼んでくれ。毎日ここにいるから大丈夫だ」
すまん、実際はそうはならなかったんだ。
気のせいかもしれないが、イスラバードの空港職員にパシュトゥーで話しかけると、
パシュトゥーかよっと、妙にパシュトゥーを軽んじる空気を感じたのだが、
タクシードライバーたちにはやたらにウケがよかった。

これから数時間をどこで過ごそうか。
過去に何度か、空港の二階に通じる階段があり、そこにはレストランもあると聞いていた。
だが、その階段がどこにあるのか分らなかった。今もよく分らない。そのうち探しに行きたい。
結局は、地元の人たちが使うベンチに座ることにした。
すぐそばに出発・到着便の情報掲示板もあり、乗り過ごす不安はない。
だが、ベンチはカオスだった。
子供を連れた家族連れが大勢いて、そんな中で女性連れの男どももいる。
一族郎党でやってきましたって感じの団体もいる。
そして、どいつもこいつもやたらに声がでかい。
オロオロしていると、サブマシンガンを持った警備の警官が、黄色い箱に視線を注いでくる。
職務質問される前にこの人ごみに紛れよう。
だが、どこに座ればいいのか?空席は乏しかった。
さらに女性の隣どころか、同じベンチに座ることもかなり問題であると、
ペシャワールでは聞いたことがあった。
案の定、お孫さんらしい子供を何人も連れたお爺ちゃんの側に座ったのだが、
しばらくして、若い女性が近付くとお爺ちゃんは座席を外したし、子供にもそう躾けているようだった。
だったら、僕もどくしかないじゃないですか。また座席を探す。
喧騒の中で数時間、日本人の僕には訳のわからない言葉が錯綜する世界で座っていた。
ここでゆっくり休憩できている僕ってなんなのだろう。
日本に行っても、日本に馴染めるんだろうか?
そもそも日本に帰るじゃなくて、日本に行くって言ってるよな。
最初の帰国の時は、休暇を心の底から待ち望んでいた。
でも、この帰国はなんだろう。確かに、心の底からは待ち望んでいた。
でも、別に日本じゃなくてもよかったよな。他の国でものんびりできるよな・・・
この時すでに、日本人であることが不自由に思えたような気がする。
この感覚はうまく説明できないけど、今も感じる。
やがて、搭乗手続きが始まる。
最終決戦の始まりだった。

追記
レベルのメーカーさんのリンク貼っておきます。
レベルってこんな機械です
http://www.topcon.co.jp/positioning/level/at.html