都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

黄色い箱と一緒に⑤イスラマバード空港最終決戦、そして関空での遭遇戦

何気にこのネタで五回も継続している。
ちょっとくどいですね。
書きだすと止まらないんですよ。
反省。

イスラマバード空港に出発用の入り口に入ると、すぐに荷物検査の場所がある。
係官が目視とエックス線検査機でのチェックしていく。
当然、二か所とも「その箱なんだ?」という話になる。
カブール空港と同様の説明を繰り返す。
タイ航空のカウンターに着く時点ですでに喉が渇いていた。
タイ航空の社員さんは、とくに黄色い箱について問うことはなく、バックパックだけを預け荷物にして、
出国審査、搭乗口へ向かう。
持ち物・身体検査のゲート。
そこが最終決戦の場となった。
荷物のバックと黄色い箱が、コンベヤに載ってエックス線検査の機械へ流れていく。
その間、僕は金属探知機のゲートを無事に通過。
しかし、なにかに驚嘆したような声がエックス線検査をモニターしている係官から上がる。
覚悟はしていたが、リアクションがでかいな~
「お前、ちょっと待て」
二人の係官が、検査機を通過した荷物を手に掛けようとした僕を制止する。
彼らに箱を獲られて、別の台へ移動。
係官は台の上に箱を置く。
「なんだこれは?」
「箱を開けろ」
箱を開ける。
「なんなんだこれは?」
「レベルマシーンです」
「なんに使うんだ?」
「測量(survey)に使うんです」
「what's survey?」
「え?」
「what's survey?」
「え?建築とかであるでしょ・・・」
まずいぞ。クマのこの貧しい英会話能力では、測量を説明できん。
「とにかくこれは何なんだ」
「武器か?」
「ぶっ武器。違う。違うって」
係官はここで絶句する行動に出る。
おもむろにレベル本体を手に取り、高さを調整する所をいじり出す。
レンズをのぞきこんだりする。
「ちょっと何やってんだ」
挙句、引っ繰り返して裏面を調べだす。
「うわー、引っ繰り返すな。やめれ―、壊れるだろー」(いや、実際はすでに故障している)
係官の手からレベルを奪い返す。
「なんてことするんだ」と日本語でアピール。
普通に通り過ぎる他の乗客の方々から、浴びせられる視線が恥ずかしい。
「これはカメラか?」
係官がそんなことを言い出したので、適当に話を合わせてカメラということで戦いは終了した。
う~ん、なんか納得いかんぞ。
それにしても疲れた・・・なんか無性に疲れた・・・なんだこの徒労感は。
二階に上がる。
そこは出発ロビー。
散々に展開された問答を見ていた人達から、黄色い箱に視線が注がれる。
もうあからさまに胡散臭そうな視線だ。
爆弾とかミサイルとか、なにかと思われてんのかな~
ロビーにいたスーツ姿の数人の日本人が話しこんでいる輪があった。
なんだろう。世界をまたにかける商社マンってところだろうか?
この服装から雰囲気からの違いはなに?
同じ日本人なのに別世界の人たちに見える。
時間が来て、バンコク行きのタイ航空の飛行機に乗り込む。
「うっわ、美人」
微笑み国タイのお姉さんを見て、思わずそんな一言が漏れ出した。
座席に座った僕はお姉さんに「毛布ください」と頼む。食事以外はひたすら眠った。
そこから日本まで、黄色い箱は何の問題にもならなかった。
バンコク空港も問題なし。
きれいで無駄に広すぎるこの空港の話は別の機会に。
バンコク発マニラ経由関空行きの飛行機は順調に日本に向かう。
夜の関空に降り立った僕は、後ろから一人の男に声をかけられた。
「すいません。ちょっといいですか?」
「はい?」
「あっ、日本の方なんですか?」
サラリーマン風の男はポケットから、かの有名なあの警察手帳を見せる。
「いま洞爺湖サミットの関係で警戒が厳しくて。特に中東系の人には声を掛けるようにしてるんですよ」
確かにジャララバードから着替えることなく、関空に至るまでシャルワルカミーズだったのだ。
確かにこの国では怪しいにもほどがある。
でも、中東の人ってそういう目で見られてるのか・・・
「まあそういうことなんで、名前と住所聞かせてもらえます~」
ん?これっていわゆる職務質問
終始、笑顔を崩さなかった私服刑事の顔を見ながら、
アフガンやパキスタンで見た警官たちとは大違いだな~と思う。
レベルをなんだと問う彼らの顔の厳しい顔を思い出すと、平和な日本にやって来たのだと実感する。
「アフガンとかNGOとかちょっと興味あるんですよ~」
どこまで本気で言ってるのか、そんなことを話す刑事さんから名刺を貰う。
名刺には下記の如くあった。
大阪府関西空港警察署警備課外事係 巡査部長○○○○」
おお、これってつまり公安警察なの~
作家麻生幾氏の小説を数冊読んでるクマは、この名刺に萌萌だったりするのだった。
ちゃっかり、名刺の裏に携帯電話の番号まで手書きで書いて渡された。
「現地に戻るときに関空に来たら、コーヒーでも御馳走するから。いろいろ聞かせて下さいよ」
うん?これって作業玉に勧誘されたのか?