都鄙往還雑考

宝塚の山の中と街をいったりきたり 2022年12月よりブログタイトルを変更しています。それ以前の記事は順次整理していきます。

RPGの日

車の助手席には、カッサダールと呼ばれる警備兵がいた。
現地服風の制服に軍用ベレーを頭にのせ、手にはカラシニコフを持っている。
カイバル峠を越えてアフガニスタンに向かう外国人は、
彼のような警備兵を同行させることが義務付けられている。
2m近い身長、余計な脂身もなく、分厚い胸板をした身体。
猛禽のように鋭い顔の彼は、無駄口という言葉を知らないらしくとても寡黙だった。
通行量の多いこのルート。前方で何やら事故があったらしく大渋滞に巻き込まれた。
周りのバスの乗客やトラックドライバーたちが、日本人の僕を見つけてジロジロ見つめてくる。
ただし、周囲から聞こえる声には「チナイー」が混じっていたので、
中国人と思われたていたようだったが・・・。(現地では、よく間違われます)
RPGを見たのは、そんな時。
道路わきの民家から出てきた男が二人。シャルワルカミーズと呼ばれる現地服を着た二人は、
いかにも「ちょっと出かけてくるよ」とか「邪魔したな。また来るよ」という感じ。
一人の手には、カッサダールと同じくカラシニコフ
もう一人の背中にはRPGがあった。
RPGとはRocket-Propelled Grenadeの略称。つまり、歩兵携帯用の対戦車ロケット。
護身用に小銃を持ってるのはわかるけど、ロケット砲って・・・。
助手席に座るカッサダールの肩を叩いて、指差した。
「問題ないよ」
笑顔でそう言った。あれだけ、寡黙で怖そうな顔していた彼が笑顔を作った。
「オマエ、笑ってる場合なのか?」
この日以降、PRGと言われて僕の頭に思い浮かぶのは、ドラクエやFFではなく、
対戦車ロケット砲となった。
およそ半年後、テロ、誘拐、戦闘が続発したことでカイバル峠の外国人通行は禁止される。